シェル要素と計算速度 2010年版

前回シェル要素の計算速度チェックをしてからずいぶん時間が経ってしまったので、今回2010年版ということで調査してみました。
 テスト問題は下図に示す薄肉円筒のねじり座屈問題で行いました。要素数は全部で約20000要素です。調査はls971_R5_Betaを使用して行いました。
 純粋に計算時間を調査するため接触条件は使用しませんでした。
 以下に,シェル要素のフォーミュレーションタイプと計算速度比を計測したグラフを掲載しますので,参考にして下さい。
 横軸にフォーミュレーションを,縦軸にBT要素を基準とした速度比を示しています。

  • ELFORM=1:Hughes-Liu
  • ELFORM=2:Belytschko-Tsay
  • ELFORM=6:S/R Hughes-Liu
  • ELFORM=7:S/R Co-Rotational Hughes-Liu
  • ELFORM=8:Belytschko-Leviathan
  • ELFORM=10:Belytschko-Wong-Chiang
  • ELFORM=11:Fast Co-Rotational Hughes-Liu
  • ELFORM=16:Fully Integrated Shell
  • ELFORM=25:Belytschko-Tsay shell with thickness stretch
  • ELFORM=26:Fully integrated shell with thickness stretch


図1 薄肉円筒のねじり座屈変形図


図2 formulation type vs 計算速度比

上記のグラフは,参考例であり目安です。問題によってこの数字は変化すると思いますので、今後別の問題でさらに検証例を増やそうと思います。

計算速度優先の解析には elform=2 を最初に使用するのがよいと思います。elform=2は1点積分要素なので計算精度が悪いのでは?と心配する人も多いようですが、経験上、落下や衝突などの衝撃解析では、だいたいOKです。まずは解析モデルが、解析結果に一番大きく影響する因子を考慮して構成されてはじめて、シェル要素などFEM理論に依存した解析要素技術の影響を議論できるのではないでしょうか。当社では影響因子が整理できるまでは、計算時間のかからない低減積分要素を躊躇せずにどんどん使用して解析を進める方向で動くことが多いです。それでも低減積分要素を使用するとアワーグラスモードの影響が心配という人もいますが、参考書レベルの話は理論的に誤差が存在するということを説明しているだけで、その結果が使い物にならないとは書いてないと思います。すなわちLS-DYNAなどの強力な商用コードで実際に計算する際、低減積分要素を使用しただけでアワーグラスモードが問題になることはそんなにありません。そんなに商用コードはやわではありませんのでご安心を。アワーグラスモードでやられるケースは、解析条件の構成に無理や無茶があることがほとんどです。たぶん、あぁちょっと無理してやってるなぁと解析をやっている本人ならわかっているはずです。